食べないの? おおかみさん。(小石川あお)
森のオオカミの生贄になるように赤ん坊のころ捨てられた男の子と、おいしく育てておおきくなったら食べるんだよっていうオオカミのお話です。
基本的に電子でしか買わないわたしが、紙本をあえて買い直したくらい手元においておきたいと思った一冊です。
作風が少し萩尾望都さんに重なるものがあるなあ、と思ったのです。一言いえば叙情的ですごく好きなスタイル。
手塚治虫から始まり、大好きな萩尾望都さんの作品でもよく出てくるようなちょっとミュージカル仕立てで、キャラクターの心情を詩的に表現するやり方。あれがふんわりと使われて雰囲気のとてもある作品なのです。
あまり細かく隅々まで書き込まず余白を残す画風で、その中で主人公の男の子は白くて(髪の毛などにトーンを使ったりしてない)、対するオオカミが真っ黒で、更にセリフのコマも、オオカミは黒に白文字。それ以外のキャラクターのセリフは白地に黒文字。これがまた画面を引き締めてかわいい。この話しの中で、真っ黒に塗られているのはオオカミだけなんですよね。そのコントラストがより二人の関係を表してます。
そして二人の会話が思わずにっこりとしてしまうような微笑ましさがあるのです。
「ぼくをたべるの?」「食べるよいつか だからもっと大きくおなり」
「あぶないことしちゃだめだよ。せっかく私が美味しく食べようとおもってるのに」
「危ないことしたらおこって、そのあとぎゅっとするのは?「そのほうがもっと美味しくなるってしらなかった?」
#セリフはちょっと簡易にしています。
ほのぼのとこんな感じの会話をしている二人が森の中で過ごす日々の話が主軸です。もう可愛くてほわほわしてきゅーっとしたくなる。
そしてとても心配性のオオカミはちょっと男の子がお使いにいこうとしただけで心配であとからつけていこうとして見つかって怒られちゃう。
なのにそんなほのぼのした中で、オオカミは静かに葛藤しているわけです。
ほんとぜひ読んでほしい。淡々と日々の生活を送っているようだけど、そこここで表現されるオオカミの愛情と哀しみ。散りばめられた童話のモチーフにさり気なく表現される恋慕と切なさ。
男の子が、可愛くて大事に育てて誰よりも幸せになってもらいたいと思ってる心配性のオオカミと、美味しく食べてもらうために大きくなりたいけれど、自分の成長に戸惑う男の子の話です。
つげ義春さんの「紅い花」という作品で、女の子に初潮がきたことを表すために、最後に川に流れる紅い花を比喩で書いて終わらせるのですが、それに通じるような、ここまであからさまではないけれどさりげない叙情的な表現が上品でじんわりきます。発情期の人魚の声をファルセットと表現してみたり。その感性が本当に素敵な作家さんです。
と、すごく偉そうに書いてますが、しっかりわたしの萌にささってきます。具体的には体格差と獣人。んでもってこの作品ではほとんどオオカミの姿なのであまり出てこないのですが、オオカミ男の男性姿がとても色っぽくて格好いいのです。端的にいうと攻めの顔が好みです。なのでそういう意味でも刺さりました。
あまり激しいエッチシーンも、興奮する盛り上がりもないのですが、最後の2話程度、えーーとなって、おーーと終わる。このさりげなく運ばれるハッピーエンドもぜひ楽しんでほしいなぁと。なのでぜひご一読を。
余談ですが、タイトルがまたいいですねー。童話的雰囲気があるのだけど、タイトルにセリフっぽい感じの「。」をつけるセンスがよいなぁ、と思います。
追加で、この人の別の作品「獣王陛下と砂かぶりの花嫁」もおすすめです。虎の王様がとにかく色っぽくて格好いい。こちらもぜひ。

