黄金なるもの、天より堕ち(伊藤クロエ)
黄金なるもの、天より堕ち ムーンライトノベルズのリンク アルファポリスのリンク
#あらすじ等は転載がはばかれるので直接上記ページでご確認いただければ…。同じ理由で記事の画像も、本当はタイトル書いた図を作ろうかと思ったのだが、作者さんが持ってるだろうイメージがあるのに勝手に作るのも…と思ってやめて、何もないのは悲しいのでそれっぽい写真を利用しました。これにタイトル入れてもよかったのだけど、それでもねぇ…(フォントや配置で結構イメージができちゃうから)。
もともと、Webを中心にコンスタントに発表していた作家さんですが、最近アルファポリスさんから商業デビューされました。そちらもいい話なので、時間があるときに書きたいです。
舞台は架空の古代の地域。モデルは恐らくローマ。魔法が出てくるファンタジーではなく、古代ヨーロッパのような地域の大国の滅びと小国が舞台となった小説で、剣闘奴隷と大国の人質となった小国の王子が主人公です。
文字数としては20万文字くらいなのでいわゆる中編くらいなんですかね。世界観の掘り下げというよりかは、この主人公二人を盛り上げるための舞台装置なので、そこまで世界観は深堀していません。もしかしたら筆者の中ではあるのかもしれないけれども、ストーリー的にはそこまで重要ではないと思われるので、状況説明に出てくる程度で、そういった状況を背景に、生真面目な王子がどう振る舞って、その彼を人質になった大国から連れ出す任務を追った剣闘奴隷がお互い思っていても、それを表に出さずにお互いの役割を果たそうとしていくお話です。
とにかく主人公の人質となった王子が健気なんですよ。そして鈍感。あえて鈍感なのか、そこに重きをおいていないからなんとも思わないのかはわからないのだけど。
例えばある場面で彼からの視点だと、自分に対してのいたたまれなさや戸惑いがあり、その後はすぐに思いを寄せる剣闘奴隷に対する描写に移って終わってしまうところ。これを今度、同じ場面を件の剣闘奴隷からみたときに映ると、客観的にはどういう状況だったのかというのがわかり、なるほど、こういう立場、状況だったのかとわかるのです。
それを読むことによって王子がこういう性格なのかと伝わるようになっています。そして、こういう状況下においての王子の価値観や性格がとても健気なわけです。自分の愛する祖国と、王族としての自分のあり方の矜持と、そこにそぐわない自分の欲に戸惑うという、とても生真面目な性格。そしてなにかあったとしてもそれを口にせず自分の役割を全うとする聡さ。直ぐに口に出して確認したくなるわたしからみると尊敬すべき我慢強さです。
そして忠誠を誓う国とその王族を守る義侠心の塊のような剣闘奴隷もまた男らしい。そしてまた愚直に忠誠を誓うわけではなくて、酸いも甘いも噛み分けた軍人で、冷酷さやしたたかさを持っているいっぱしの男性なわけです。年齢設定が30歳後半。あの時代の男性なら10代後半で独り立ちで現在と比べ物にならないほど成熟の速さが求められる状況だろうと推測。必要とあれば人を切り捨てたりするのも当然という人間らしさが、任務の対象の王子に対する尊敬と尊重と、愛おしさの描写が溢れ出るわけですね。
なので、先もはらはらするし、この二人の感情や思いにじれじれしながら読むというお話です。
個人的な萌はとにかく体格差。古代ローマをモデルとした舞台。王子と奴隷、と好きなものてんこもりです。
途中にお互いが思いを伝えあったあとがまた長い年月。話数にすると1話、2話でサラッと描写されて終わりなわけですが、それでもお互い自分の責務や立場に信念を持っているのだなぁ、というところがじれったい。でもその信念を捨てるわけではなく、ちゃんと未来がつながるような終わり方が素敵です。個人的には最後の王子の一言が、タイトルにそのままつながったところに「おお」とうなりました。正しく、こうくるかー! という感じ。こう最後にカチッとハマるとものすごく読後感が気持ちよいです。最初、アルファポリスとムーンノベルズでタイトルが違い、わたしはムーンノベルズ版のほうが好きだったので、そういう意味でもよかったです(ムーンノベルズ版は最初からこのタイトル)。
さてこれからは作品に対してではなく、わたしのひとり語り。
子供のころからギリシャ神話やローマが大好きで、長じてはローマにも旅行したことがありますが、あの時代の享楽さと人間くささがとても好きなのです。
そんなわたしが特におすすめしたいのがレスピーギという作曲家がつくったローマ三部曲といわれるローマをテーマとした交響曲です。この作曲家はそこまで古い人ではないのですが長らくローマで活動しており、そのときにインスピレーションを受けたローマという都市を「ローマの松」「ローマの祭り」「ローマの噴水」と3つのテーマで曲を作ったのです。
すごくローマという町の雰囲気が描写されていると思うのが「ローマの噴水」なのですが、この作品だと「ローマの松」がとてもぴったりだな、と。ローマの松の冒頭は、ローマが栄えた神話のような明るいはしゃぐような状況が描写されているのですが、だんだんとローマの中にある厳かを表現した部分になり、退廃と享楽から内部から腐っていくようなローマの負を連想させる部分になります。そして最後の5分くらいがとても有名な進軍のテーマになるのです。とても雄大なこの部分がとても大好き。朝日の中をゆっくり歩みを進める大軍を彷彿させるこのテーマは何度聞いても興奮するのですが、ここがこの話の大国が滅びる描写と彷彿させるなぁと思い出し、久々にこの曲を聞きました。この進軍部分は正確にはローマ軍の進軍なんですが、この話に合わせると、小国がローマに迫る狼煙の音ですね。なのでぜひ、この曲をBGMにして読んでもらいたいと思う次第です。
ちなみにこの曲、比較的新しい時代なのか、楽器が賑やかです。管楽器が前面に出て、ハープやピアノが豊富に使われててもー大騒ぎです。映像でみてても楽しい曲です。
#この解釈はあくまでわたしの個人の曲の解釈なので、「レスピーギ」「ローマの松」等で検索にひっかからないようにしますが、もし音楽目的でこのページに来た人は、このページやこの解釈はご放念ください。
最後に、ローマにいったときにとったピンホール写真を一枚。再訪したいなぁ。今ならもっとうまいピンホール写真撮れると思うのよね…。

いくつか、こういう世界観と妄想して楽しんでた写真。(撮影地:ローマ)






ローマの猫ちゃん
